妊娠をめざす食生活に欠かせない食材のひとつが、魚や貝、タコなどの「魚介類」です。
魚介類は、妊活をサポートする栄養素が豊富なうえに、健康維持に役立つ成分も多く含まれています。
調理や食べるときの手間がめんどうで、お肉より食べる機会が少なくなりがちですが、妊活をはじめたら、ぜひ積極的にとりたい食材です。
そこで今回は、妊娠する力を上げる魚介類の選び方や食べ方のポイント、おすすめの魚介類などをご紹介します。さらに、食べ方に気をつけたい一部の魚介類についても解説します。
栄養たっぷりでヘルシーな魚介類を食べて、妊娠力を上げる食生活を始めましょう!
妊娠力アップに役立つ「魚介類の栄養」とは
魚介類が妊娠力アップに役立つ理由は、良質なタンパク質と脂肪、ビタミン類、ミネラル類など、妊活に役立つさまざまな栄養素が多く含まれているからです。
魚介類の代表的な栄養素について、それぞれの働きをみていきましょう。
魚介類の代表的な栄養素
タンパク質(体をつくる材料になる)
魚介類には、良質な動物性タンパク質が多く含まれています。タンパク質は、皮膚や筋肉、内臓、爪など、私たちの体を作る材料になるだけでなく、性ホルモンや、卵子、精子、赤ちゃんの体づくりにも使われるので、妊活中に一番大切な栄養素です。
タンパク質が不足すると、筋肉量や全身の機能が落ちやすくなり、疲労や貧血につながるほか、卵子や精子の質が低下したり、ホルモンバランスが乱れたりするなど、妊娠を遠ざける要因になります。
ビタミンD(カルシウムの吸収を促進)
ビタミンDは、魚の肝臓部分や脂ののった赤身魚に多く含まれていて、カルシウムの吸収をうながし、骨の形成をサポートするはたらきがあります。
妊活中は、歯や骨の材料になり、丈夫にする働きがあるカルシウムをしっかりとることが大切ですが、その働きを助けるビタミンDの摂取も欠かせません。
ビタミンDは母乳に多く含まれるので、母乳を通じて赤ちゃんの骨の発育も助けます。妊活中から授乳中まで、途切れることなく、しっかりとりたい栄養素です。
DHA・EPA(抗酸化・抗炎症作用で老化を防ぐ)
魚の脂肪には、不飽和脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)と、EPA(エイコサペンタエン酸)が含まれています。DHAとEPAは、どちらも、抗酸化・抗炎症作用があります。
抗酸化作用は、活性酸素によって体がサビつく「酸化」を防ぐこと。抗炎症作用は、免疫機能が過剰にはたらいて起こる「炎症」を防ぐことです。
酸化と炎症が起こると、細胞の老化が進み、卵子や精子の質が低下するため、妊娠の妨げになります。また、DHA、EPAには、脳の機能を高める作用があり、赤ちゃんの脳の発達を促す効果が期待できます。
亜鉛(男性の生殖能力を高める)
亜鉛は、カキ、カニ、ホタテ、タコ、イワシなどに豊富に含まれています。
男性の前立腺や精子に多く存在していて、細胞分裂を正常におこない、成長を促進するはたらきがあり、精子の形成に欠かせません。
女性にとっても、亜鉛が不足すると生殖能力が衰えるため、不妊症の原因になるともいわれています。胎児の細胞分裂をうながす働きもあるため、妊娠前からしっかりとりたい栄養素です。
鉄(子宮の環境を整える)
魚の血合い肉の部分には、鉄が多く含まれています。鉄は、タンパク質に次いで、妊活中にしっかりとりたい栄養素です。
鉄は赤血球をつくり、酸素を全身に供給して貧血を予防するほか、粘膜をつくる材料になり、子宮内の環境を整える作用があり、妊活をサポートします。
不足すると、貧血やめまい、顔色が悪い、爪が弱くなる、集中力がなくなるなどの症状が出やすくなります。女性は常に不足しやすいので、意識的にとるようにしましょう。
カルシウム(骨を丈夫にして精神を安定させる)
煮干しや干し海老、骨ごと食べられる魚からは、カルシウムを多くとれます。
カルシウムは、丈夫な歯や骨を作るために必要で、赤ちゃんの発育にとって欠かせない栄養素です。また、ストレスを鎮め、精神を安定させる働きもあります。
慢性的に不足すると、肩こりや腰痛を起こしたり、骨量が減少し骨折しやすくなるだけでなく、イライラしやすい神経過敏な状態になるので妊活中はしっかり摂りましょう。
妊娠力アップにおすすめの魚介類
数ある魚介類のなかでも、とくに妊活中の女性と男性におすすめしたいものを、それぞれ3つずつご紹介します。魚介類を選ぶときの参考にしてくださいね。
女性におすすめの魚介類3選
青魚(イワシ、サンマ、アジ、サバなど)
青背の魚といわれる、イワシ、サンマ、アジ、サバなどには、不飽和脂肪酸のDHAとEPAが豊富に含まれています。
DHAとEPAの抗酸化・抗炎症作用により、卵子の老化を予防し、妊娠の確立を高める効果が期待できます。さらに、中性脂肪を下げて、血液をサラサラにする効果もあるので、血のめぐりを良くして、体の冷えを解消します。
赤ちゃんの知能の発達にもかかわるので、妊娠中も続けてとるようにしましょう。
また青魚には、良質なタンパク質をはじめ、ビタミンB2、Dなどのビタミン類、鉄、カルシウム、タウリンなどのミネラル類もバランスよく含んでいるので、妊活中の女性の栄養補給におすすめです。
カツオ
カツオも青魚の一種ですが、ビタミンB群と鉄が豊富に含まれるのが特徴です。
疲労回復、体力向上、貧血予防などに役立つので、疲れや体力不足が気になる女性におすすめ。血流も良くするので、冷え改善にも効果的です。
良質なタンパク質をはじめ、ナイアシン、ビタミンDなどのビタミン類、亜鉛、タウリンなどのミネラル類、不飽和脂肪酸のDHA、EPAもバランスよく含んでいます。
サケ
サケの赤い身には「アスタキサンチン」という色素成分が含まれています。強い抗酸化パワーで細胞の酸化を防ぎ、卵子の老化予防に効果を発揮します。
良質なタンパク質をはじめ、ビタミンB群、不飽和脂肪酸のDHA、EPAも多く含んでいます。
カルシウムの吸収をうながすビタミンDも豊富なので、チーズや牛乳などカルシウムを含む食材と合わせると栄養効果がアップします。
男性におすすめの魚介類3選
うなぎ
精のつく食材としておなじみのうなぎは、ビタミンAが豊富に含まれるのが特徴です。
ビタミンAは、生殖機能を維持し、免疫力を高める作用があります。ビタミンB群とビタミンEも多く、老化予防や疲労回復に効果的で、スタミナ不足や疲れを感じる男性におすすめです。
良質なタンパク質と脂質が多く高カロリーなので、食物繊維の豊富な野菜や海藻と組み合わせると栄養バランスが良くなります。
カキ
カキは、亜鉛や鉄、銅などミネラルの宝庫です。
とくに亜鉛の含有量は、すべての食品の中でもトップクラス。亜鉛は精子の形成にかかわるので、しっかりとることで、男性の生殖能力向上につながります。
カキに含まれる糖質の一種「グリコーゲン」は、すばやくエネルギーに変わり、スタミナアップに役立ちます。ミネラルたっぷりで低カロリーなので、食べすぎや肥満が気になる男性の栄養補給におすすめ食材です。
イカ・タコ
イカとタコは、「タウリン」の含有量が、ほかの魚介類と比べて非常に多いのが特徴です。
タウリンは栄養ドリンクにも利用される疲労回復効果の高い栄養素で、肝機能を強くする作用もあるので、疲れているときや、アルコールをよく飲む男性は、積極的にとりましょう。
ビタミンEやナイアシンなども多く、抗酸化作用や代謝アップ効果も期待できます。高タンパクで低脂肪、低カロリーなので、食物繊維の多い野菜や海藻、きのこなどとあわせてダイエットメニューに取り入れるのもおすすめです。
妊娠力を上げる魚介類の食べ方
魚介類を食べて、妊娠力を上げるために、どれくらいの量をどのように食べればいいのかをみていきましょう。
1食あたり「手のひらひとつ分」の量をとる
魚介類は、1食あたり100g程度をとるようにすると、必要なタンパク質がとれます。
100gの目安は「手のひらひとつ分」。
さらに、肉、卵、大豆製品のうちどれかを、手のひらひとつ分とり、1食で手のひら2つ分のタンパク質源となる食品をとるのが理想です。
切り身よりも1匹丸ごと食べられる魚を
魚は、ブリやタイなど切り身で食べるものより、煮干しやししゃも、イワシなど頭から尾まで食べられる魚のほうが、栄養価が高くなります。
1匹をまるごと食べることで、いろいろな栄養素をバランスよくとれますが、とくに骨ごと食べると、カルシウムをしっかり補給できます。
同じ種類の魚ばかり食べない
同じ種類の魚ばかりを食べていると、栄養が偏るだけでなく、水銀のとり過ぎやアレルギーの原因になります。
旬を楽しみながら、いろいろな種類の魚を食べるようにしましょう。
缶詰を上手に利用する
魚をさばいたり、触ったりするのが苦手で遠ざけている方は、魚介類の缶詰を利用してはいかがでしょう?
サバの水煮缶、あさりの水煮缶、カニ缶、ツナ缶などの缶詰は、缶を開ければすぐに使えて、料理の時短になるうえに、栄養も十分にとることができます。
妊活中に魚介類を食べるときの注意点
魚介類は、妊活に役立つ栄養素がしっかりとれる食材ですが、食べるときに気をつけてほしいことが2つあります。
1つは、水銀を含む魚をとりすぎないこと、もう1つは、食中毒に気をつけることです。
それぞれについて、詳しく説明してみましょう。
水銀を含む魚は食べすぎないで!
魚介類の一部には、自然界に存在する水銀を体内に蓄積していて、ほかの魚介類と比べて、水銀濃度が高いものがあります。
食物連鎖によって水銀が増えるので、とくに大型の魚に注意が必要です。
近年の研究では、魚介類を通して水銀を多くとってしまうと、胎児の発育に影響を与えるおそれがあると指摘されています。
妊婦以外は、極端に偏った量を食べなければ、健康を害することはありませんが、妊娠する可能性のある妊活中は魚の種類と量に注意して下さい。
◎金目鯛・メカジキ・黒マグロ・メバチなど
⇒食べる量は、1週間に切り身1切れ(約80g)までにする
◎キダイ・マカジキ・南マグロなど
⇒食べる量は、1週間に切り身2切れ(約160g)までにする
詳しい内容は、厚生労働省の案内をご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/051102-2a.pdf
お刺身など生魚は鮮度に気をつけて!
妊活中は、魚介類を食べて食中毒を起こさないように、細心の注意が必要です。
もし、妊娠していた場合、抵抗力が弱くなるので、下痢や嘔吐などの症状が強く出る可能性があります。鮮度が良く、衛生管理の行き届いた魚介類なら、お刺身で食べてもいいですが、体調の悪いときは避けましょう。
「アニサキス」という寄生虫にも気をつけてください。
アニサキスは、生のサバやアジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの内臓にいて、知らずに食べてしまうと、激しい腹痛や嘔吐など強い症状が出ます。妊娠初期になると流産の危険性もあります。
新鮮な魚を購入し、内臓をすぐに取り除き、目で見て寄生虫がいないかを確認してから、食べるようにしましょう。釣ってきた魚を食べるときは、とくに気をつけましょう。
「妊娠力を上げる魚介類の食べ方と注意点」まとめ
今回は、妊娠力を上げる魚介類の食べ方のポイントと注意点についてみてきました。
魚介類は、妊活に大切なタンパク質をはじめ、飽和脂肪酸、ビタミン類、ミネラル類などが豊富に含まれる優秀な食材です。
魚介類の代表的な栄養素と働き
タンパク質 | 体をつくる材料になる。性ホルモン、卵子、精子、赤ちゃんの体づくりにも使われる。 |
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ビタミンD | カルシウムの吸収を促進する。母乳を通じて赤ちゃんの骨の発育を助ける。 |
DHA・EPA | 抗酸化・抗炎症作用で老化を防ぐ。赤ちゃんの脳の発達を促す効果も。 |
亜鉛 | 男性の生殖能力を高める。胎児の細胞分裂をうながす働きも。 |
鉄 | 貧血を予防。子宮の環境を整える。 |
カルシウム | 骨を丈夫にする。精神を安定させる。 |
魚介類を食べる機会が少ない方は、時間のある週末に魚料理を取り入れてみてはいかがですか?
旬の魚介類は、うまみたっぷりで栄養価も高いので、パートナーと一緒に、海の恵みをおいしくいただいて、妊娠力を上げていきましょう。